三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『Last Love Letter』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子

『Last Love Letter』A面、『告白』収録。

Last Love Letter

10枚目のシングルにして、高橋久美子在籍時最後のシングルとなっています(次は3年後の『満月に吠えろ』)。

Last Love Letter

Last Love Letter

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歌詞

Last Love Letterということで、まだ自分が想っている人と別れるときに、相手に送る言葉だと読めます。

今後は会えない人ではあるが、会えない中でもその人の幸せを祈り、そのままの自然なあなたでいてほしいと願う、そんなメッセージでしょうか。

一番の、

涙は他人に見られて

初めてカタチになるの

 

涙は他人に見られて

初めて輝き出すのです

という普遍的な歌詞もさることながら、個人的には二番のサビ~アウトロがとても好きな流れです。

あなたはひとに愛されて

初めてあなたになるの

 

あなたはひとを好きになって

何度もあなたになるのです

 

わたしの届かぬあなたへ

 

愛のある日々を

栄光の結末を

 

どうか

あなたに あなたに

 初めて聴いた時は、「もしかして他の人を好きになった」と言われて別れたのかな? などと思いました。もしかしたら、仕事の都合とかで別れてしまったのか。あるいは、自分が病気とか。色々な解釈で、それぞれ思いを仮託して読める歌詞ではないでしょうか。

深くは語りませんが、別離のときの相手の幸せを願う歌って、今までなかなか無かったのではないかな、と思います。軽い恋愛などではなく、人として愛している関係というのがよく見えてきます。

 

演奏

もう今さら私ごときが何を語ればいいのかわかりませんが、言わずと知れたベースライン。そして負けずと劣らない変則的なドラム。いや本当にめちゃくちゃかっこいい。

この複雑な土台の上に乗っかっている、ストロークオンリーのギターと動きの少ないメロディーラインも絶妙なバランスです。セルフ・プロデュースではありますが、やはりいしわたり淳治の影響もあってか、音の引き算が巧妙です。

前半戦はベースとドラムが大騒ぎですが、サビではどちらも大人しくなり、さらにギターソロでもどちらも大人しいままです。一方、入れ替わるような形でボーカルやギターはサビとギターソロで本領発揮、といった感があります。なるほどなるほど。

 

なんだろう、本当にこの曲についてはただ聴いてほしいというだけですね。いくつか芸が細かいところをお伝えしておくと、やっぱりAメロでベースが暴れ回っているので聴いてみてほしいところが1つ。

もう一つは、ドラムを"変則的"と言いましたが、実は規則がある中で、少し入り組んでいるところがあるというだけです。ドラムの「叩いてみた」動画などを低速で再生してみれば入り組み方がわかると思います。

このハイハットを細かく使った不規則性は、どことなくスピッツっぽいなと思ったんですが、この間くみこんのスピッツ30周年の寄稿を読んだら、スピッツの﨑山さんからも影響を受けたと書いてあって、ああやっぱりなと。(スピッツのドラムはシンプルそうでいて、よく聴くとすごく複雑なのでぜひ聴いてみてください)

Album Mix

『告白』では、複雑なリズム構成といえば『ヒラヒラヒラク秘密ノ扉』があり、またストレートなロックとして『風吹けば恋』、独特な構成とアレンジの『8cmのピンヒール』などが軸として機能していますが、この曲はそのどれとも異なった、チャットモンチーの中でも独自の雰囲気を持っています。サウンドとしては一番ハードロックに寄せた感じですかね。これをオルタナっていうのですか? よくわかりませんが。

Album Mixとしては、おそらくスネアやベースの音が少しだけ丸くなっているのではないでしょうか。『告白』全体を通して、とくに後が『やさしさ』ということもあり、まろやかな音色ですので、雰囲気をあわせた感じでしょうか。純粋にロックとして一曲を聴くなら、シングル版が個人的には好みです。ただ、やはりアルバムの中で見ると統一感が取れていると思います。

有名な話ですが、実は冒頭のスティックの4カウントが、アルバムでは舌打ちに変えられています。気づきましたか? これはスティックのほうが良いと思うんですよね……まあこんなわけで、私はシングル版を割とよく聴いています。皆さんはどっち派ですか?

ジャケット

かっこよくないですか? このいびつな感じが逆にツボです。CDシングルの中ではトップクラスで好きな一枚です。

MV

MVも好きなんですよね~。最初はコントかと思うんですが、後でおじいちゃんが胸を押さえながら手を上げているシーンなんかを見ると、なんだか泣けてきちゃって。とくにこの後のくみこん脱退・そして完結を知っている身からすると余計にですね。でも2045年、ライブやってほしいな。


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ライブ@求愛ツアー

このアレンジもめちゃくちゃ良いです。『シャングリラ』や『8cmのピンヒール』は微妙な反応もありましたが、これは元からキーボードあった曲かと一瞬思うくらい。世武さんの愛が伝わってきました。

余談ですが、このころのえっちゃんの、「~のです」などの語尾でちょっと怖い顔をして男前に切る感じがかなりかっこいいです。


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