三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

目次

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『ドッペルゲンガー』歌詞の考察

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

曲自体の評はこちらにあります↓

sheep-three.hatenablog.jp

さて、おそらくチャット史上最も難解であろうこの歌詞を考察していきたいと思います。

ただ、考察を読んだら曲の世界観が壊れてしまう、ということもあるので、見たくない方は見ないでください!!!(その責任は取れない……)

ヒラヒラヒラク秘密ノ扉

では、書いていきます。結構理知的な説明をするので、不快に思われたらすみません。

解釈を思いついたと言っても、何通りか思いついて、確実に一つに定まったわけではないので、案1,2と分けて書きます。

【案1】本当にドッペルゲンガー

まあ順当に、ドッペルゲンガーのことを歌った曲と見てみます。

この説の手がかりとなるのは、

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『ドッペルゲンガー』レビュー

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

『表情(c/w)』収録。『ヒラヒラヒラク秘密ノ扉』カップリング曲。

表情<Coupling Collection>

高橋久美子(くみこん)のエッセイ集『いっぴき』で、橋本絵莉子は「くみこんの匂いがする」歌詞として特に7曲を上げていますが、その一曲です。*1

この書き方からしても、結構気に入っている一曲なのではないか、とわかります。*2

ドッペルゲンガー

ドッペルゲンガー

  • provided courtesy of iTunes

*1:くみこんのにおいがする歌詞っていうと、まあ全部そうなんだけど、いろいろ思い返してみても、ほんとにまあ全部そうなんだけど、「サラバ青春」、「ドッペルゲンガー」、「Y氏の夕方」、「雲走る」、「あいかわらず」、「桜前線」、「湯気」、等の歌詞は、どこをどう切り取っても高橋久美子だし、メロディーラインもとても気に入ってる。
 今でも、くみこんの歌詞に一番ぴったりなメロディーをのせられるのは私だと思ってる。

*2:ちなみに私がくみこんの7曲を歌詞で選べと言われたら、『ハナノユメ』『湯気』『ウィークエンドのまぼろし』『愛捨てた』『8cmのピンヒール』『キャラメルプリン』『桜前線』かな。ベタだけど名曲ですから。えっちゃんとは2曲一致。

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余談、余談

『BEST MONCHY 2-viewing-』のDisc2のメニュー画面で流れている曲って『余談』なんですけど、今日YouTubeのダイジェスト映像を見ていたときに初めて、2人体制の『余談』なのだと気づきました……。

↓件の映像。3:00くらいから『余談』です。

ちなみに、他の曲名はすぐわかりますか? イントロクイズできますね。*1

www.youtube.com

『余談』って公式YouTubeチャンネルにも映像があがっている通り、2013年のループマシンを使った演奏がライブとしては有名ですし、公式もそっちをかなり押し出しがちだと思います。

www.youtube.com

実際、このハンドマイクを持った演奏は相当衝撃的ですし、名ライブの一つだと思うのですが、こっちの印象が強すぎて原曲を忘れてしまいがちなんですよね(私は)。

しかし、しかしです。原曲だとくみこんがドコドコ叩きまくっていてかっこいいので、改めて聴き直してみてください。この曲のくみこんのスネアめっちゃ好きです。響き方とメリハリのバランスが絶妙。

ただ、個人的にえっちゃんのドラムも好きで(バスドラとかが)、甲乙つけがたいので、まあこれは両方聴くしかない。

ちなみに、ベースはそんなに変わっていないはずですが、2人のときが断然かっこいいです。まあ1/3→1/2ですものね。音作りが少し違うかも。

てなわけで、余談の余談でした。

 

ああ そう うん いや でも

べつに やっぱ そっか なんか あのさ

 

*1:順に『バースデーケーキの上を歩いて帰った』『満月に吠えろ』『手の中の残り日』『長い目で見て』『余談』『消えない星』でしたね

『謹賀新年』レビュー

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

『YOU MORE』収録。

【特典QRコードステッカー無し】YOU MORE

「楽しくてポップ路線のアルバムで、『耳鳴り』のヒリヒリ感がなくて失望した」みたいなレビューも少なくないこのアルバムですが、どこが楽しいだけで軽いのかさっぱりわかりません。むしろチャットモンチーのアルバム史上一番影があって痛切な1枚だと思うのですが。これは直後の脱退という事件を知っているからでしょうか。

たとえば、幸せそうなこの曲にしたって、結構深みがあるのです。

ちなみに、構成はABABサビAサビです。Bメロがサビ1という感じもしますが、歌詞に合わせた面白い構成です。

謹賀新年

謹賀新年

明けましておめでとう

神社へ向かう長い列

屋台のホットドッグ食べたいと

私の足は逆の列に向かう

とか、

きっとおばあさんになっても

わがままな私を許して

しわしわのほっぺに

小さなキスをくれるでしょうか

と、あっけらかんとした声で夫婦・カップルの幸せを歌っているのに、どうしてサビになると、一変して痛切なメロディーとなり、

あなたを思えば思うほど

それは言葉になどできず

あなたが優しければ優しいほど

私は悲しくなるのです

と、含みのある歌詞になっています。この夫婦/カップルならではの暗さ、秘めたる思いというのは、『ときめき』にも通ずるものがありますね。

そして衝撃なのがこの後。

願い事ひとつ叶うのなら

あなたを愛していますように

怪我しても病気になっても

あなたを愛していますように

これ、相当びっくりしました。というか、最初に聴いたときは歌詞カードも見ていないので、「あなたといられますように」か「愛してくれますように」みたいなものだと勝手に解釈していたのですが、後に本当の歌詞を知って驚いたという具合です。

すごくありませんか? 結構切実な思いですよね。新婚夫婦なんかで、「一生幸せにするよ」とかなんとかキザな科白を吐く人もありますが、実際のところは自然にしていたらきっと心が離れてしまったり、忘れてしまったりすることも確かにありうるわけです。まず、現実的に2人の関係が冷めることも想定しているのが驚き。

そして、もし〈未来の私が〉「あなた」と別れることになったとしたら、そこに選択の余地はないか、或いはそれがベストチョイスということになるでしょう。未来の私は、きっとそれが一番幸せな道だから選ぶはずです。が、〈今の私〉は、何はともあれあなたを愛せないことは全て悲しいことだと断定してしまい、どうしたってあなたといることが幸せなのだ、今の自分の目に狂いはない、と決めつけます。この強い意志があるからこそ、「願い事」は、〈未来の私〉も「あなたを愛していますように」となるのです。

 

「あなたを愛していますように。」

この曲の真髄はもうここの一節にあると言っても過言ではありません。

よくある願い事が「愛してもらえますように」だから、それを裏返しにしてみた、というわけではありません。詩は裏を掻くと面白い、とも言われますが、そんな理知的なものではありません。仮に理知的だったとして、この一節はそれ以上のインパクトを持っています。

つまり、これは「無償の愛」です。もはや愛することが幸せであり、見返りを求めていないのです。さらに、愛を語りながらも現実路線で、長く続かないことも予見しているがゆえに、神様に願う……という斬新な展開もあります。

チャットモンチー史に残る名フレーズだと個人的には思っています。『告白』までの3枚が〈ヒリヒリ感、脆さ〉を有したアルバムだったとすれば、『YOU MORE』は明るいだけじゃなく、〈深み〉です。歌詞にせよサウンドにせよ、とにかく奥行きがあるのです。

サウンド

そうそう、歌詞についてだらだら書きすぎて音楽の話ができませんでした。

アルバムの中でサウンドプロダクトは一貫したテーマがあるように思いますが、その中でこの曲だけに言えることと言えば、

・バンドサウンド自体はそれぞれ歪んでいるのに、和やかな音にまとまっている。

和楽器が入れ方うまい。自然すぎて初導入とは思えない。

・『桜前線』同様、3人で弾けない(和太鼓とドラム)

・えっちゃんのボーカルが歌詞に合わせてサビ前後で変わる。ABは子供っぽく、サビは大人っぽく。

・メロディー自体もサビで突然シリアスになる。そのギャップ。

てな感じですかね。えっちゃんのボーカルは本当に成長しているという感じです。ベストアルバムとか聴き分けて見てください。結構声の伸びとか表現力が変わっています。

YOU MORE (Forever Edition)

YOU MORE (Forever Edition)

 

余談ですが、くみこんの結婚観を知れるのが、「やっぱ指輪買おうかな」です。短いけれど感動的な文章なので、ぜひネットで調べてみて下さい。

『耳鳴り』アルバムレビュー

『恋の煙』『恋愛スピリッツ』を経て、満を持して出された1stフルアルバム。

「アルバムは、少なくとも一度は順番に通して聴くべき」という持論を持っている筆者ですが、このアルバムは通しで聴いてみると大変なことになります。

耳鳴り

まずは曲順から見ていきましょう。

  1. 東京ハチミツオーケストラ
  2. さよならGood bye
  3. ウィークエンドのまぼろし
  4. ハナノユメ(ALBUM MIX)
  5. どなる、でんわ、どしゃぶり
  6. 一等星になれなかった君へ
  7. おとぎの国の君
  8. 恋の煙(ALBUM MIX)
  9. 恋愛スピリッツ
  10. 終わりなきBGM
  11. プラズマ
  12. メッセージ
  13. ひとりだけ

既発表曲は『ハナノユメ』『恋の煙』『恋愛スピリッツ』の3曲だけという、攻めた内容になっています(他のアルバムは大抵新曲と既発表曲が同じ割合くらい)。

並び順はどうでしょうか。個人的に、M1〜M3(〜M5)とM11〜M13は結構好きな並びです。

1曲目のジャカジャーンというイントロだけでかっこいいフレーズから始まり、変則的で大人しめな2曲目から、3曲目でマーチングのリズムを生かした感傷的なシーンまで持っていくのはなかなかスムーズだと思います。マーチング繋がりで『ハナノユメ』を持ってきたあと、突然あの印象的なきついアルペジオが始まるのもかっこいいですよね。

特に『ハナノユメ』は1曲目のイメージが強く、独特な曲でもあるのでよく入れ込んだなという印象。

しかし、ここからが結構な〈耳鳴り〉ポイントで、このあとの4曲を通して聴くのが結構しんどいです。

理論面から見ると、コードが単調で変わらない曲と、曲調が入り乱れてついていけない曲が混在しているからです。

『どなる、でんわ、どしゃぶり』が静かなところからシリアスでハイテンポな雰囲気まで持ち上げたのに、それを帳消しにして『一等星になれなかった君へ』が始まります。ギターのコードが印象的なのですが、それゆえに逆に曲の終盤にかけての単調さを醸し出してしまっています。

『おとぎの国の君』は、ABABCサビA'という構成で、サビが来るまでがダメ押しな感じ。単体で聴けば面白いのですが、特に前の曲などでコードの繰り返しにうんざりしているところなので、曲内でヘビロテされている感覚で変になります。

そして、続く『恋の煙』。シングルではキャッチーなのですが、アルバムに馴染みきれていないのと、ちょっときつさがありまして。というか、『ハナノユメ』から『プラズマ』までの間が全部尖った音なので疲れてくるんですよね。

そろそろ終わりかと思ったところで『恋愛スピリッツ』。ダメ押し曲の代表格というか。このダメ押し具合が名曲たる所以なのですが、この流れで聴くのはしんどいです。

さらに、『終わりなきBGM』なんですが、初めて聴くと頭が?で埋め尽くされます。3曲くらいを繋げた感じ。CDだとテンポも少し変わるので余計大変です(ライブだと一定のテンポなので意外と普通の曲に聴こえる)。

ダメ押し的なコードのループとクエスチョンマークで脳が埋め尽くされ、すっかり耳鳴りがするようになってきました。はっきり言って結構病的な並びだと思います。

11曲目からの流れは好きなのですが、この耳鳴りを助長する仕上がりです。

謎の構成の『プラズマ』からダメ押しな『メッセージ』、そして『ひとりだけ』です。『ひとりだけ』は構成とサウンドに凝っていますが、実はメロディーは繰り返しが激しく、同じメロディーを様々に聴かせている曲とも言えます。

ひとりだけ

ひとりだけ

振り返ってみると、前3曲で「かっこいいな」と思わせておいて、M3-4の独特のリズムで虜にしたあと、ひたすらに尖った音で繰り返しと奇を衒った構成をぶつけてきて、チャットモンチーの沼から抜け出せなくさせる構図になっています。

この12曲を聴いたあとの『ひとりだけ』だからこそ良く聴こえるのです。既に共依存関係に落ち込んだ我々とチャットモンチーの間だから、ラストのシャウトが心に響きます。

きっと誰しもアルバムが終わったあと、ずっと耳鳴りが止まないでしょう。

演奏も含め粗削りなところは多いのですが、チャットモンチーの世界にずるずると引きずり込んでしまうこのアルバムは唯一無二ですし、実際『耳鳴り』が最高傑作というファンも少なくないですよね。

素でダークなところが垣間見えるのは好きなのですが、よくこれを1stアルバムで出せたな……と驚く気持ちもあります。この頃既にあった曲でも、『手の中の残り日』とか『three sheep』『湯気』あたりを入れれば少し明るくなったのでしょうけれど。ポップ路線を捨てて概ねダークでハードなロックで1枚をまとめたところが凄いところです。ジャケット同様の暗い紅色の雰囲気が漂っています。

耳鳴り

耳鳴り

 

楽器の話とか書きたいことは沢山あるのですが、そこそこ長くなってしまったので、また書くときは後篇として付け足します。

↓こちらの記事もどうぞ↓

sheep-three.hatenablog.jp

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『ときめき』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子

『ときめき/隣の女』『共鳴』収録。

ときめき

ときめき

乙女団を迎えてのシングル、どちらもあっこの筆ですが、2曲でそれぞれ違う雰囲気を感じられます。『隣の女』が現代的なオンナ同士の本音を表した一方、この『ときめき』は恋するような年齢から脱したあとの女性の独白、といった具合です。

あっこが歌詞を書くときに「いま、この年になったえっちゃんに歌ってもらいたい」という旨の話がありましたが、なるほど出産を終えたえっちゃんが歌うとなればよくわかる歌詞です。

ところであっこさんは結婚しているのでしょうか。芸能人やミュージシャンの私生活にそれほど興味があるわけではないので、特に詮索するつもりもないのですが、この歌詞を見るに、そういう関係の人がいないわけではないのだろうな、と思います。

 

『耳鳴り』にはラブソングもたくさんありますが、その"若い"恋愛からだんだんと変化していくのが、『Last Love Letter』『あいまいな感情』『ここだけの話』『謹賀新年』『ふたり、人生、自由が丘』『ときめき』『I laugh you』『たったさっきから3000年までの話』という感じです。”大人”になり、”夫婦”になり、そして”親”になっていくチャットモンチーの過程がわかります。

この曲については、"夫婦"になり、あるいは子供もいるような状態で、かつて恋人だった「あなた」について歌っています。

印象的なのがサビのフレーズ。

いつだって恋がしたいよ あなた以外と

いつだって恋がしたい あなた以外に

思うばかり 抜け出せないのに

 どきっとしますよね。何を言っているかわからないけれど、切実さは伝わります。難しいのですが、続きを読んでいくとわかりますでしょうか。

 それに、

赤と赤が混ざりできる赤ちゃん 二人はまだ青いから

未来はまた遠ざかる

 とあります。さしずめ、夫婦となったけれども未熟、というところでしょうか。

しかし、晴れて夫婦となった二人ですが、逆に慣れてきてしまってお互いに「恋をした」り、「ときめ」いたりすることが無くなってきてしまったのです。これが作者にとっては少しさみしくも感じられているのではないでしょうか。だからこそ、2番では、

いつだってときめきたいよ あなたとだって

いつだってときめきが 私にだって

胸の奥の声が聞きたい

 と歌われるのです。

この境遇は全く違うので想像もつきませんが、そこはかとない深みを感じさせられる一曲です。また大人になってから聴いてみると違うのかな。

ここでは全部は触れませんでしたが、歌詞をよく聴いてみると、「いちごの種」とか「必死な私」と、綺麗で素敵な歌詞なのがわかります。歌詞を字面で眺めてみるのも大事ですね。

 

楽器は、1番ではピアノが中心でドラムが少し入っているだけですが、2番になるとギターにベースとにぎやかになります。

実は『小さなキラキラ』でも冒頭がキーボードメインで後半がバンド、という構成があり、また『桜前線』では、(ベースレスですが)キーボードが曲の根本を担っているなど、スリーピース時代には全くなかった、という構成ではありません。なので、従来のチャットモンチーファンにも受け入れやすいバラードになっているのではないでしょうか。

 

あとは感想みたいなあれこれを。

2番なんですが、Aメロでギターがテレレレと歌に相槌するように入るのが、まさしくチャットモンチーらしくって好きです。

うーん、具体的な曲名がパッと出てこないんですけど……『レディナビゲーション』とかでしたっけ。

あと、ギターがそこでいちいちミュートするときに弦を少しこする音が録音されてるのもポイントですね。実はギター結構歪んでて、『愛捨てた』を思い出させます。

ベースはやっぱり"大人しく"なりましたよね。『こころとあたま』とかではかっこいいのが見られますけど。差し引きのバランスが上手くなったと言えるのかもしれません。昔は「死んでもルート弾きしない!」ってノリでしたし()

ドラムは愛子さまですが、あっこ・えっちゃん・恒さんに比べると一番くみこんっぽい音ですね。2番Aメロでハイハットが少しオープンなのとか、くみこんがよくやるやつ。

恒さんもなんですけど、ドラマーは2人ともくみこんリスペクトで、普段の自分とは少し変わった叩き方をしているように聴こえます。

ときめき / 隣の女

ときめき / 隣の女

 

そうそう、1番と2番で楽器以上に差がある気がして、コード検索してみたら、どうやら1番はadd9を使っているのに、2番になると普通のメジャーコード(9番目の音が追加されていない)になっているらしいんです。全く粋な計らいです。キーボードを良く聴いてみてくださいね。