三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『おとぎの国の君』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子

『耳鳴り』収録。

 

1stフルアルバムの『耳鳴り』は、かなり暗めでロックな曲が多く、以後のポップな路線とは大きく異なります。この曲もその一つで、しかしエンディングにかけて力強くなります。

もう一つ、『耳鳴り』では曲調がガラリと変わってしまう曲が多いように思いますが、この曲も、Aメロ→B→A→B→C→サビ→A'、のように展開します。

 

おとぎの国の君

おとぎの国の君

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 冒頭はベースのメロディーから始まります。これもかなり『耳鳴り』特有のサウンドに聴こえますが、あっこのベースは安定感と包容力があるのでとても好きです。1番と2番の間(?)のささやかなベースも印象深いです。

 

そしてそのあっこが書いた歌詞。

曲の展開と同じく2つのAメロが対句形になっており、「あれは月にさらわれたんじゃないだろうか」を境にサビへ、そしてまたAメロに戻ってくるという詞の展開が美しいです。

特に、

君なしじゃただの白黒の絵 味気ないんだ

ださくてかっこ悪い僕のこと忘れないでいて

あたりは、かなり刺さる歌詞じゃないでしょうか。

 

『染まるよ』もそうですが、こういう素直な描写にかけては福岡晃子の腕が光るところですね。

くみこんはもっと文学的というか修辞的。えっちゃんはナルシスティックでダークな感じですかね。作詞家3人の違いも相まって、素晴らしいバンドだと思います。

 

Aメロの声が掠れたような歌唱からの、サビの力強い歌のギャップもまた良いですね。サビのメロディーは、言ってしまえば「普通」ですが、Aメロのトーンを二回繰り返して聴いてきたリスナーには強く残るものがあります。

サビの全員歌唱も、初期っぽさはありますが、これが後にチャットモンチーとして完成されていくのかと思うと感慨深いですね。多すぎるまでのコーラスはチャットモンチーの個性ですものね。

 

 

耳鳴り

耳鳴り