作詞・作曲:橋本絵莉子
『耳鳴り』収録。
初期の代表曲……でこそないものの、初期の隠れた名曲として挙げる人も多い一曲。
壮大な構成
構成が少しむずかしいというか、壮大な曲になっています。
A: スローテンポなドラム
B1: 加速してワウを使ったイントロ
C1: ギタボのみのAメロ
D1: 間奏(静か)でドラムとベースが加わる
E1: 静かめのサビ
F1: 音量が大きくなって間奏
C2: ハネるリズムでAメロ
D2: 間奏+ソロ
E2: 大サビ
F2: 轟音でアウトロ①
B2: 加速してアウトロ②
一回も同じ部分を繰り返していないというのがなかなか意地というか尖りを感じられて好きな曲です。なんといっても見どころだと思うのが、まず上でC1と書いたところの、すっと音が途切れてギターの弾き語りのようになるところ。ライブでもきれいに音が切れていて、一気に歌に引き込まれます。
あと大サビの前半、「この夜空に全部…」のところは他のサビと音程が違ってぐわんと上がるようなメロディになっていますが、この上がり方もエモーショナルさを引き立てています。そして最終的にアウトロがそのまままたイントロと同じドラムに戻って終わるのも美しい物語性を感じられます。
「物語の最終話」
この曲、具体的に何についての曲かはあまり明示されていません。ただ初期のえっちゃんの歌詞らしく、やはり鍵となる部分に鬱屈とした感情からの力強い脱却への方向性があると思います。
具体的な描写としては「ギター」そして「あなた」が登場しますがいずれも過去形になっています。そして現在については「私ひとりだけの物語」「物語の最終話は違うみたい…」とあります。過去に何があったのかはよくわからないのですが、このような対比が考えられます:
過去……ギターをかき鳴らした、「あなた」がいる、「第一話」
現在……ギターはずっと触っていない、「ひとりだけ」、「最終話」?
取っ掛かりとしてはもう使っていないギターを見て懐かしく思う気持ちから始まっていますが、どうやらみんな過去のものとなってしまったようです。かつてギターをかき鳴らして、「あなた」がいた、その時はもはや過去のものとなり、今でも「思う気持ちは変わらない」のに、環境だけはどんどん変わっていってしまう。自分が思い描いていたような結末にはたどり着かない。それが「物語の最終話は違うみたい…」という一節に詰まっているのではないでしょうか。
すごく青春性の詰まった歌詞で、この時期特有の、周囲の変化の中に取り残されそうになる鬱屈とした気持ちが詰まっている素晴らしい曲だと思います。それが壮大なギターの演奏とも相まって、なるほど初期の大作としてアルバムを締めくくるにふさわしい一曲です。
とはいええっちゃんの歌詞はいつでもやはり暗い、そしてどこかメタ認知的な、誤解を恐れずに言えば(自分を)冷たく突き放すような歌詞が多くて好きな部分です。最近の曲でも「deliver」とか「今日がインフィニティ」とか。
挨拶
お久しぶりです。ほぼ一年ぶりの更新になっています。ライブレポ等の下書きは溜まる一方なのですがたまにはレビュー記事も書いていこうと思います。今年は橋本絵莉子ソロの2ndアルバムが出るとか出ないとか言われているので、そちらを楽しみにしつつ、チャットモンチーの記事もたまに書きます。