『恋の煙』『恋愛スピリッツ』を経て、満を持して出された1stフルアルバム。
「アルバムは、少なくとも一度は順番に通して聴くべき」という持論を持っている筆者ですが、このアルバムは通しで聴いてみると大変なことになります。
曲順
まずは曲順から見ていきましょう。
- 東京ハチミツオーケストラ
- さよならGood bye
- ウィークエンドのまぼろし
- ハナノユメ(ALBUM MIX)
- どなる、でんわ、どしゃぶり
- 一等星になれなかった君へ
- おとぎの国の君
- 恋の煙(ALBUM MIX)
- 恋愛スピリッツ
- 終わりなきBGM
- プラズマ
- メッセージ
- ひとりだけ
既発表曲は『ハナノユメ』『恋の煙』『恋愛スピリッツ』の3曲だけという、攻めた内容になっています(他のアルバムは大抵新曲と既発表曲が1:1くらい)。
並び順はどうでしょうか。個人的に、M1〜M3(〜M5)とM11〜M13は結構好きな並びです。
1曲目のジャカジャーンというイントロだけでかっこいいフレーズから始まり、変則的で大人しめな2曲目から、3曲目でマーチングのリズムを生かした感傷的なシーンまで持っていくのはなかなかスムーズだと思います。マーチング繋がりで『ハナノユメ』を持ってきたあと、突然あの印象的なきついアルペジオが始まるのもかっこいいですよね。
特に『ハナノユメ』は1曲目のイメージが強く、独特な曲でもあるのでよく入れ込んだなという印象。
しかし、ここからが結構な〈耳鳴り〉ポイントで、このあとの4曲を通して聴くのが結構しんどいです。
理論面から見ると、コードが単調で変わらない曲と、曲調が入り乱れてついていけない曲が混在しているからです。
『どなる、でんわ、どしゃぶり』が静かなところからシリアスでハイテンポな雰囲気まで持ち上げたのに、それを帳消しにして『一等星になれなかった君へ』が始まります。ギターのコードが印象的なのですが、それゆえに逆に曲の終盤にかけての単調さを醸し出してしまっています。
『おとぎの国の君』は、ABABCサビA'という構成で、サビが来るまでがダメ押しな感じ。単体で聴けば面白いのですが、特に前の曲などでコードの繰り返しにうんざりしているところなので、曲内でヘビロテされている感覚で変になります。
そして、続く『恋の煙』。シングルではキャッチーなのですが、アルバムに馴染みきれていないのと、ちょっときつさがありまして。というか、『ハナノユメ』から『プラズマ』までの間が全部尖った音なので疲れてくるんですよね。
そろそろ終わりかと思ったところで『恋愛スピリッツ』。ダメ押し曲の代表格というか。このダメ押し具合が名曲たる所以なのですが、この流れで聴くのはしんどいです。
さらに、『終わりなきBGM』なんですが、初めて聴くと頭が?で埋め尽くされます。3曲くらいを繋げた感じ。CDだとテンポも少し変わるので余計大変です(ライブだと一定のテンポなので意外と普通の曲に聴こえる)。
ダメ押し的なコードのループとクエスチョンマークで脳が埋め尽くされ、すっかり耳鳴りがするようになってきました。はっきり言って結構病的な並びだと思います。
11曲目からの流れは好きなのですが、この耳鳴りを助長する仕上がりです。
謎の構成の『プラズマ』からダメ押しな『メッセージ』、そして『ひとりだけ』です。『ひとりだけ』は構成とサウンドに凝っていますが、実はメロディーは繰り返しが激しく、同じメロディーを様々に聴かせている曲とも言えます。
https://music.apple.com/jp/album/%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%91/574724569?i=574724584&uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog
止まらない"耳鳴り"
振り返ってみると、前3曲で「かっこいいな」と思わせておいて、M3-4の独特のリズムで虜にしたあと、ひたすらに尖った音で繰り返しと奇を衒った構成をぶつけてきて、チャットモンチーの沼から抜け出せなくさせる構図になっています。
この12曲を聴いたあとの『ひとりだけ』だからこそ良く聴こえるのです。既に共依存関係に落ち込んだ我々とチャットモンチーの間だから、ラストのシャウトが心に響きます。
きっと誰しもアルバムが終わったあと、ずっと耳鳴りが止まないでしょう。
演奏も含め粗削りなところは多いのですが、チャットモンチーの世界にずるずると引きずり込んでしまうこのアルバムは唯一無二ですし、実際『耳鳴り』が最高傑作というファンも少なくないですよね。
素でダークなところが垣間見えるのは好きなのですが、よくこれを1stアルバムで出せたな……と驚く気持ちもあります。この頃既にあった曲でも、『手の中の残り日』とか『three sheep』『湯気』あたりを入れれば少し明るくなったのでしょうけれど。ポップ路線を捨てて概ねダークでハードなロックで1枚をまとめたところが凄いところです。ジャケット同様の暗い紅色の雰囲気が漂っています。
楽器の話とか書きたいことは沢山あるのですが、そこそこ長くなってしまったので、また書くときは後篇として付け足します。
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