三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『バスロマンス』レビュー

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

『女子たちに明日はない』B面。『生命力』『表情』収録。

生命力 (Forever Edition)

もともとカップリング曲でありながら、アルバムにも収録されてしまったという一曲。後にも先にもこの曲だけです。


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もともと人の結婚式に呼ばれたら『シャングリラ』などを演奏したそうですが、歌詞中の「希望の光なんてなくったって良いじゃないか」が結婚式にはよろしくないということで、そこだけ歌わないで演奏していたそうです。初期のチャットの歌詞って完全に明るい曲は全くなくて、必ず影があったり傷があったりしていて、それが良さでもあったのですが、この『バスロマンス』あたりから(少なくとも字面だけ読めば)純粋に明るい曲というのもちらほら出てきます。

 

歌詞

言わずと知れた名歌詞の一つ。遠距離恋愛が題材です。「ピンク色」「灰色」で心理描写をする辺りは、王道の比喩とはいえ、流石くみこんの筆だなと思わされます。

言葉遣いが好きなのは特にサビです。

あなたを好きでいてよかったな

あなたを信じてよかったな

遠距離恋愛の体験談を元に作った歌詞だそうですが、寂しさだけでなく「信じて」という点に言及したところが実感に満ちていると思いました。

遠距離だと浮気されても、二股されてもおかしくないわけですし、またはただ気が離れてしまうこともありうるわけで、自分はただ相手を信じることしかできないわけです。

その茨の道を乗り越えて見事結婚までたどり着いた感慨が、実に端的に表されているのではないかな、と思います。

また、ラスサビのところで、

もう一人では行かないでね

あなたを幸せにするからね

という歌詞が加わってくるのも素敵です。この一途さは理想的なものですね。

 

くみこんが『バスロマンス』『Good luck my sister!』『謹賀新年』などの歌詞を書いているときは本人は未婚だったそうですが、くみこんの歌詞は切実さが特徴的だと思います。

『謹賀新年』の「願い事一つ叶うなら あなたを愛していますように」もそうですが、あくまで自分が「あなた」を愛するということに幸せを見出しています。人を愛すると自分も幸せになる気持ちは確かに頷けます。

ちなみに、えっちゃんの『コンビニエンスハネムーン』なんかを読むと「拍手君に会えた私 よくぞここまでたどり着いた」とか歌っていて、あくまで主観的な立場の歌詞なのですが、これまたそれぞれの味が出ていて良いですね。

 

バスロマンス

バスロマンス

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サウンド

Aメロのテッテーテレッというフレーズがシンプルなのに印象的ですね。裏で鳴っているドラムも、絶妙なタイミングで入るスネアも、バスドラムの跳ねるような連打も快く聴こえます。

Bメロのドラムもスネアの入り方が工夫されていて良いんですよね。計算高いとでも言うべきでしょうか。

ポップな曲ですが、ギターソロもかっこ良いです。また、サビから続いている、2音ごとに音階の上がるベースも力強くて安定感があります。

あと、コーラスも綺麗ですよね。この良さはAcoustic ver.を聴いて気づきました。

 

Album Mix

有識者ではないし耳も良くないので細かなことは言えませんが、Mix音源のほうではベースの音量が下がり、ドラムも全体的にマイルドな音に変えられています。あと心なしかギターソロのエコーが強くなったような。気のせいかもしれませんが。

『表情』はバラードやミディアムロックも多いので、その中においては合ったMixかもしれません。聴きやすいとは思いますが、個人的には『生命力』版がロック色があって好みですね。

 

ライブで客がみんな手を振ったり、えっちゃんとあっこびんが向かい合って歩み寄ったり遠ざかったり、おじぎしたりする構図も大好きです。