三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

【楽曲提供】上白石萌音『白い泥』配信開始

作詞・作曲:橋本絵莉子の『白い泥』が配信開始になりましたね。
皆さん聴いてみましたか? 爽やかで素敵な曲です。

白い泥

白い泥

先に言っておきますけど、編曲は清水俊也、とありますのでチャットモンチー度は低いです。でもそれが面白いところでもあります。
Aメロは橋本絵莉子のソロとか、橋本絵莉子波多野裕文を彷彿とさせます。えっちゃんは高音にぐいと上がるのを歌うのが得意なので、作曲でそういうメロディが多用される気がします。
サビはちょっと『生命力』っぽい感じ。テンポのせいかな。
個人的にはBメロ(?)が一番好きです。「わかっているけど期限つきの世界」の「せかい」のメロディ、一瞬ドキッとさせられます。
そうですね、色々あれに似てるこれに似てると書きましたが、全体的には新しさを感じさせる曲でした。

上白石萌音さんも、初めて聴きましたけど、歌が上手いですね。可愛らしすぎず、大人びた声でありながらも高音に難なくついていけるの、なかなかいない歌い手かもしれません。

編曲を担当していないということもあり、意外とエリコ色の薄めな作品に仕上がっていますが、メロディラインの良さは際立っているようにも思います。
やっぱり編曲って大事なんですね。チャットモンチーだと『共鳴』でサポートメンバーが関わっていますけど、確かに新しさがありましたし。
んー、でも今回についてはえっちゃんに編曲もしてもらいたかった……ような。確かにまあ、えっちゃんが作るバラードを急加速させたみたいな目新しさはありましたけど。
sp.universal-music.co.jp

さて、他の曲、n-buna(ヨルシカ)の作曲・編曲のとかも聴きましたけど、対照的にそっくりそのままヨルシカで、これはなるほど面白いアルバムだなと思いました。名だたる面々が楽曲提供をしていますし。
上白石萌音『note』は明日発売ということです。

『素直』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子

『生命力』収録。

素直

素直

  • provided courtesy of iTunes

 シンプルなアコースティック編成で、ピアノをあっこ&えっちゃんが連弾、クラリネットをくみこんが演奏しています。さすが吹奏楽部。

構成は、A→B→サビ→サビ×2 です。「サビがどこだか」はっきりした曲なんですよね。

一回しか聞けないのですが、このBメロが結構好みです。

続きを読む

『恋の煙(同期ver.)』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子
LPシングル『たったさっきから3000年までの話』B面、ラストアルバム『誕生』ボーナストラック。
たったさっきから3000年までの話(完全生産限定盤) [Analog]
1stシングルの打ち込みバージョンです。“同期”のBase Ball Bear小出祐介が参加しており、またメロディが一部異なります。

……「いや、なんで『恋の煙』じゃなくて同期ver.のレビューを書くんだよ」っていう声はわかります。わかりますがまあ読み進めてください。
正直に言うと、『恋の煙』はそんなに好きな楽曲じゃなかったのですが、これを聴いて原曲のほうもより好きになったのです。

聴けばすぐわかりますが、主に違う点は3つ。

小出祐介の参加

チャットに男性ボーカルが混ざるのは『Yes or No or Love』(アジカン後藤)、『私が証』(“男陣”下村)などありますが、やっぱり新鮮です。特に男声女声で掛け合いするのが、曲の内容にもぴったりです。

続きを読む

『愛捨てた』レビュー

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

9thシングル『染まるよ』、『表情(c/w)』収録。

染まるよ

セルフ・プロデュース……ですかね? 『RPG』がいしわたり淳治プロデュースでしょうか。

(追記:『表情』インタビューによれば、セルフプロデュースだそうです)

チャットモンチーの中でもかなり好きな一曲なんですが、映像化されていないんですよね。なんで……。顔to顔ツアーが録画録音なく、また『告白』のライブでも演奏されていないからでしょうけども。どこかフェスとかのDVDにはあるのでしょうか。

愛捨てた

愛捨てた

  • provided courtesy of iTunes

愛捨てたとの言葉の通り、失恋の歌です。それにしても、『染まるよ』のB面にこれを入れるとはなかなか思い切った選択ですよね。一悶着あったようですが、カップリング曲との組み合わせも含めるとシングルの中ではかなり好きなほうです(『ときめき/隣の女』『majority blues/消えない星』とかが好き)。そして失恋2連チャンからの『RPG』。すごい構成。

 

やっぱりこの曲は大音量のギターと歌詞が最高です。サビがすごく好きだし実際キャッ―なので、Aメロとかのアレンジ次第ではシングルカットできた気もします。隠れた名曲(ってこの表現嫌いなんですけど)を紹介せよと言われたらまずこれは漏らしませんね。

続きを読む

【楽曲提供】『白い泥』(上白石萌音)が8/23から配信

【楽曲提供】

橋本絵莉子作詞・作曲の『白い泥』という曲が、8/26発売の上白石萌音のアルバム『note』に収録されるらしいです。

8/22からEテレのアニメ「メジャーセカンド」のオープニング曲に、8/23からは先行配信もあるらしいです。

hashimotoeriko.com

えっちゃん作詞作曲の楽曲提供ですよ!!!

歌唱も好きですが、あのプライベートな詞を書くえっちゃんが、あくまで他人に提供する曲っていうのが興味深いです。

実は「完結」以後、あまり詞曲両方の提供はしていないのですよね。これからもっと増えていくのでしょうか。楽しみです。

『どなる、でんわ、どしゃぶり』レビュー

作詞・作曲:橋本絵莉子

『耳鳴り』収録。

 

このアルバムにしてはシンプルな曲構成です。

ロックでキャッチーなナンバーで、『耳鳴り』を代表する曲の一つではないでしょうか。

『どなる、でんわ、どしゃぶり』と、ダ行の平仮名で、印象的な名前ですが、曲を聴いてみるとなるほど詩的だなと思います。「別れ」をテーマにした曲ですね。

名前に負けず劣らず印象的なギターから曲は始まります。Am7をアルペジオで弾いているのに近いのですが、歪んだサウンドも含めてかっこいいです。

どしゃぶりの雨の日の電話。2人が喧嘩しているが、「私」の方はもう別れをなんとなく察しているという、ドラマチックなストーリー仕立てです。

この歌詞の秀逸なのは、一番肝心なところを口に出さないところです。

たとえば1番では、

これで何もかもわかったよ 今さら口にも出せない  

2番では、

変わらないでいたかった だけどあなたはもう

 と言っています。具体的な「どしゃぶり」などの描写、そして「あぁさようなら」という、漏れ出る心の声だけで聴いている側にしっかり伝えてくれます。

続く部分ですが、

喧嘩だってこれでラスト ほんとはどうでもいい

うやむやにしないのは 全部あなたのため

 と、これでもまだ相手を気遣うような場面も垣間見えます。なるほど……なかなか難しい心情ですね。シリアスな場面であることがひしひしと伝わってきます。

これで何もかも終わったね

でもさっきから泣いてばかり

 そう、つまり別れることはわかっていたし、自分はそのつもりで腹を括ったのに、それでも少し迷いの感情が出てしまう、そんな場面でしょうか。

しかしこの歌い方といい、歌詞の態度といい、橋本絵莉子はロックな人だなーとつくづく思いますね。かっこいい。

 

そして、2番終了後から最後のサビではちょっとテンポが前のめりになりながら、ギターもカッティングに変わります。ここまじでかっこいい。いやほんとチャットモンチーは〈かわいい〉で捉えられがちですけども、ファンとしては〈かっこいい〉の要素を感じるときが多いように思います。

「さよぅ~ならぁぁぁ!」っていうシャウトも印象的。別れに際しての強い自我みたいなのを主人公から感じる、そんな歌となっています。

それから最後の、一旦ドラムが止まってギターだけ響き、またドラムが叩いて終わるところもロックですよね。まさに『耳鳴り』のするエンディングです。

耳鳴り

耳鳴り

 

 

 

『夕日哀愁風車』レビュー

作詞・作曲:橋本絵莉子
デビューミニアルバム『chatmonchy has come』収録。

夕日哀愁風車

夕日哀愁風車

漢字六文字で「漢詩の題か?」ってくらいの重いタイトルですが、雰囲気は健康的なパンクという感じでアップテンポな一曲です。

曲構成

『耳鳴り』まではつけないといけない曲構成です。この曲も例に漏れず面白い構成をしています。
イントロ→A→B→サビ→ソロ→B→サビ→大サビ→アウトロ(=イントロ)
という、"戻ってくる"形になっています。
歌がある部分をイントロと名付けるのもなんですが、これはもう、「明るい曲を印象的なメロディで挟んだ」としか言えないような……。

インディーズ時代や『耳鳴り』、それから『キャラメルプリン』などを聴く限り初期のチャットモンチーは翳(かげ)のある暗めのメロディーが多いと思うのですが、その暗さを引き継いだ頭と終わりの中に明るい曲を挟んだ感じが特徴的です。
ただ、この曲はとにかくイントロが良くて、あの暗めのトーンが好きなので、サビで「こっち行っちゃうのかぁ」みたいなショックはありますね。

『chatmonchy has come』ってかなり実験的な側面が大きくて、特に多彩な曲でまとめることで反応を探ろうとしているような節があると思います。
結局のところ『ハナノユメ』がヒットして、そういう路線に『生命力』で走っていったのだと思いますが、結果から言うとこの曲のような明るく早いロックはあまり引き継がれませんでしたね。強いて言うなら『きらきらひかれ』とかでしょうか。カップリングだと『湯気』などがありますね。
一方で『惚たる蛍』は割と良かったのか、カップリングなどで引き継がれていきますね。

サウンド

イントロの暗めのメロディがやっぱり良いですね。そのあとで途端に明るくなるのも、さっきはがっかりと言いましたが、かなり斬新なのではないでしょうか。
「健康的なパンク」って述べた通り、ドラムはエイトビートでギターもコード弾きという、一般的なスリーピースの演奏をしています。くみこんのエイトビート、なかなかレアですよ。
面白いのはやっぱりベースで、ボーカルに合わせてぐいぐい上下するメロディーを奏でています。この曲はベースを軸に展開しているので、あっこファンはぜひ聴いてくださいね。

青春期の歌詞

ハイテンションな気分は街のネオンにゆらりゆられて
切なくとも哀れに散った なんでこんなに悲しい

こう、中2っぽいと言いますか、こんな感傷的な気分たまにありますよね。それが、

ちゃんと生きていけるだろうか
ちゃんと大人になれるだろうか
誰かに言いたくても口に出せない
夢ってなんだろうか

と、将来に迷う青春期ならではの不安に繋がっていくわけです。それを明るいメロディーにのせて歌い上げる。「学生」臭は強いですが、こういう素直な曲もチャットモンチーの中にたまに挟まっていると結構良いなぁと思います。

特に一番好きな部分は、

移りゆく時の中で みんなと同じ服を着た
みんなと同じ本を持った
私だけが止まっているみたい

です。このワンフレーズ、まさに言い得て妙だと思うのです。やがて『majority blues』で飛び出す名フレーズに繋がっているのかな、とも。あれが回顧する曲ならこれは現在進行形の曲。チャットモンチーがいつも等身大の自分の気持ちを歌い出すバンドだからこそ、健康的に歳を重ねている感じもまた好感が持てます。
chatmonchy has come