三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『愛捨てた』レビュー

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

9thシングル『染まるよ』、『表情(c/w)』収録。

染まるよ

セルフ・プロデュース……ですかね? 『RPG』がいしわたり淳治プロデュースでしょうか。

(追記:『表情』インタビューによれば、セルフプロデュースだそうです)

チャットモンチーの中でもかなり好きな一曲なんですが、映像化されていないんですよね。なんで……。顔to顔ツアーが録画録音なく、また『告白』のライブでも演奏されていないからでしょうけども。どこかフェスとかのDVDにはあるのでしょうか。

愛捨てた

愛捨てた

  • provided courtesy of iTunes

愛捨てたとの言葉の通り、失恋の歌です。それにしても、『染まるよ』のB面にこれを入れるとはなかなか思い切った選択ですよね。一悶着あったようですが、カップリング曲との組み合わせも含めるとシングルの中ではかなり好きなほうです(『ときめき/隣の女』『majority blues/消えない星』とかが好き)。そして失恋2連チャンからの『RPG』。すごい構成。

 

やっぱりこの曲は大音量のギターと歌詞が最高です。サビがすごく好きだし実際キャッ―なので、Aメロとかのアレンジ次第ではシングルカットできた気もします。隠れた名曲(ってこの表現嫌いなんですけど)を紹介せよと言われたらまずこれは漏らしませんね。

 歌詞はくみこんです。とにかくうまい。

こんなに悲しい夜でさえ やっぱりお腹は空くのだから

私はまだ人を 好きになるのでしょう

 失恋してベッドでうつぶせになってそのまま徹夜してしまって、長い長い夜が空けて朝が来るのですが、もはや死んでしまおうとまでも思うほど無気力になっても、どうしても「お腹は空く」のですよね。この、とても実感がある歌詞。ただただ上手いとしか言えません。

えっちゃんに歌わせることを見越してなのでしょうが、「おなかがすく」という言葉(音)の斡旋も素敵ですね。もしくみこん本人が歌うとしたら、多分この言い回しにはならないはず。まさにチャットモンチーの良さとはここにあります。

 1番が内省的な歌詞だったのに対し、2番では

冷蔵庫の悪趣味ステッカー

丈の足りない遮光カーテン

と、「二人お揃いの記憶」を象徴するモノの羅列になっています。

なかなか思い切ったことをするなぁと驚くわけですが、しかしそもそもこれは何も今に始まったことではなく、古くは枕草子にまで由来するような表現です(※「うつくしきもの。瓜にかぎたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。……」など)。感情を言語化するというのは一歩引いたところから自分を俯瞰する営みなわけで、全く人は感性を揺さぶられたときにそれを冷静に言語化することは叶わず、ただ物に仮託することによってのみ感情を表現しうるのです。

ややこしい述べ方をしましたが、つまりモノを羅列することで、同じような経験のあるリスナーには強く訴えかける歌詞となっているわけです。

 

さて、サウンド面はというと、いやもう、これはかっこいいの一言につきます(語彙力)

歪んだ大音量のギターで冒頭のイントロを奏でられるのが震えますね。この高音に上がっていくメロディと相まって力強さが半端じゃない。そういえば、『表情』のときのインタビューでえっちゃんが「最大限まで歪ませているギターのミュートを外すときのフッって音が好き」みたいな話をしていましたけど、CDではそこまでわかりませんね……。

この曲、ベースがやや弱めでスネアとギターの主張が激しいんですが、スネアもギターもやや遅れ気味な拍なんですよね。若干気になるところではあるんですが、曲のロック度を高めているようにも思えて、この曲に関しては好きです。

※そもそも『告白』期のくみこんのスネアについては意見がさまざまあって、たとえば『風吹けば恋』などはそれこそ恒岡さんのようにメリハリをつけて叩くべきところを、(打力が)軽すぎだ、というのもあれば、いやいや、『海から出た魚』なんかではそうやって(音が)重く伸びることが素晴らしいんだ、とか。確かに『風吹けば恋』のCD時点でのスネアはあまり好きじゃないんですが、それこそこの曲や『やさしさ』なんかについては、このだらけたような、シャープではないモワッとしたスネアの打音がぴったりだなと思うのです。

ベースに関しては、ラスサビ直後にメロディを弾いているのですが、そこにギターが重なっていく過程のところが、ささやかですけどとても良いです。比較的リズムキープをしている曲かなと思います。他の二人があえて遅れ気味な分。

 

えっちゃんが演奏中に笑顔を見せることってほとんどないと(少なくとも『YOU MORE』以前は)思うのですが、どこかで見た『愛捨てた』のライブ映像で、ラスサビ付近で気持ち微笑んだような表情なのが印象深かったです。でも、この歌詞にはそういう笑顔が似合っていますよね。『表情』ですし。

 

表情<Coupling Collection>

表情<Coupling Collection>