三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『恋の煙(同期ver.)』レビュー

作詞:福岡晃子 作曲:橋本絵莉子
LPシングル『たったさっきから3000年までの話』B面、ラストアルバム『誕生』ボーナストラック。
たったさっきから3000年までの話(完全生産限定盤) [Analog]
1stシングルの打ち込みバージョンです。“同期”のBase Ball Bear小出祐介が参加しており、またメロディが一部異なります。

……「いや、なんで『恋の煙』じゃなくて同期ver.のレビューを書くんだよ」っていう声はわかります。わかりますがまあ読み進めてください。
正直に言うと、『恋の煙』はそんなに好きな楽曲じゃなかったのですが、これを聴いて原曲のほうもより好きになったのです。

聴けばすぐわかりますが、主に違う点は3つ。

小出祐介の参加

チャットに男性ボーカルが混ざるのは『Yes or No or Love』(アジカン後藤)、『私が証』(“男陣”下村)などありますが、やっぱり新鮮です。特に男声女声で掛け合いするのが、曲の内容にもぴったりです。

②えっちゃんの歌い方

楽器が打ち込みなのもあるでしょうが、こざっぱりした歌い方になっています。特に原曲は熱を込めてシャウトするような歌だったので、かなり対照的です。

③メロディの変化

えっちゃんのパートでは、原曲に対するコーラスに該当するようなメロディになっています(原曲のコーラスではありません)。

やっぱり原曲を聴き慣れていると最初は違和感を覚えます。しかし、何回か聴くと、耳から離れなくなるクセのあるメロディだと気づくかと思います。
たとえば、原曲はギターの8分音符×2の高音が印象的なイントロでしたが、この曲ではその強さが抑え気味になり、代わりにギターの止まっているところに、テレテレテレテレと音の登っていくシンセの音が足されています。ドラムは恐らく完全に打ち込みで、ドラムというよりただのビートになっています。
どれも結構耳に染み付きますし、意外とこういう細かい部分で縦ノリ→横ノリへの脱皮を果たせていると思います。

そして、ドラムが淡白なのと同様にあっさりと、そしてメロディをアレンジしたえっちゃんのボーカルが、この曲にぴったりなんです。勿論、小出さんの声にも合っていて、とにかく完成度が高いんです。
特に「ゆるりゆるり融けながら」のメロディの上下なんか涙無しには聴けませんもの(誇張) 自分で一旦作ったメロディからここまで外しておいて整えられるっていうのが凄さしか感じません。

この"魔改造"を経てもなおいい曲であるのは、アレンジが良かったのもあるでしょうが、結局は原曲の良さなんです。あくまでシンプルなバンドサウンドで、しかも同系統の曲でも後に『ヒラヒラヒラク秘密の扉』などの『恋の煙』を上回る(と勝手に思っていた)楽曲が出ていたこともあって、原曲自体はチャットモンチーの一つの原点としか見ていなかったのですが、反省あるのみです。

そうそう、打ち込みになってもう一つ良かったのは、歌に集中できるようになったことです。じっくり聴いてみると歌詞も素敵です。が、これはまた原曲のレビューで。

誕生(初回生産限定盤)

誕生(初回生産限定盤)

それにしても、自分たちの1stシングルをこんなにまで変えられる(しかも「完結」直前に)とは、まったくチャットモンチーには驚かされるばかりです。