三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『シャングリラ』レビュー(歌詞&MV篇)

作詞:高橋久美子 作曲:橋本絵莉子

3rdシングル『シャングリラ』2ndアルバム『生命力』収録。

チャットモンチーBEST~2005-2011~』『BEST MONCHY 1 ~Listening~』にも収録。

シャングリラ

(メルヘンなジャケットですね)

シャングリラ

シャングリラ

  • provided courtesy of iTunes

言わずとしれたヒット曲で、チャットモンチーはこれをきっかけにMステ出演などを達成、そのままアルバムを出して(女性バンドで当時最速のデビュー2年2ヶ月時点で)武道館2days…という一連の流れの、きっかけになった曲でもあります。

チャットモンチーといえばシャングリラ、という方も多いのかもしれません。『染まるよ』や『風吹けば恋』かもしれませんが(個人的には小さい頃にCMで聞いたことがあったので、3人体制では唯一『風吹けば恋』を知っていました)。

そんな曲のレビューを今更ながら書いていこうと思うわけです。よろしくおねがいします。

歌詞

やっぱりクミコンの歌詞は良いですよね。ハマったきっかけは全てが衝撃的だった『ハナノユメ』なのですが、『シャングリラ』の「幸せだって叫んでくれよ」という部分を聞いて「やっぱりこのバンドいいな、推そう」と決意した次第です。

携帯電話を川に落としたよ 笹舟のように流れてったよ あぁあ

君を想うと今日も眠れない 僕らどこへ向かおうか あぁあ

チャットモンチーは、というよりロックバンドは、概して携帯電話が嫌いです。同じアルバムの『モバイルワールド』を聴けば一目瞭然。

2番ではこう続きます。

あぁあ 気がつけばあんなちっぽけなもので 繋がってたんだ

あぁあ 手ぶらになって歩いてみりゃ 楽かもしんないな

たしかに。という感じです。当時は2006年。ガラケーの時代で、今のようにスマホ依存などと騒がれてはいませんでした。だから無意識でいたのですが、これは今の時代も通用する話だなと思います。

そしてこの携帯電話のちっぽけさ、空虚さを示すのに「笹舟のように流れてったよ あぁあ」という表現を使うところ。これが一つ見どころではないでしょうか。笹舟。携帯電話の比喩で「笹舟」ですよ。

こう、一旦流れていくのを目にしてしまった瞬間、途端に胸が軽くなって、流れていく携帯電話をぼうっと眺めている感じでしょうか。この独特さが歌詞の魅力となっています。

シャングリラ 幸せだって叫んでくれよ

時には僕の胸で泣いてくれよ

シャングリラ 夢の中でさえ上手く笑えない君のこと

ダメな人って叱りながら 愛していたい

サビは一つ一つの言葉遣いがそれぞれ素敵ですね。きりがないので全部は書きませんが。

ストーリーとしては、2人の登場人物が見えてきます。愚直で不器用な「君」。君を愛する「僕」。

「君」はプライドが高いから、「僕」には弱いところを見せないのですが、それを少し淋しくも思っているのが「僕」の心情ではないでしょうか。

ただ、頼ってもらえなくてなよなよしている「僕」は、携帯電話を川に落としたところで吹っ切れます。「君」との繋がりを携帯電話に求めていた「僕」ですが、そんなちっぽけなものではなく、もっとしっかり繋がりたい、と思ったのでしょうか。自分への言葉か相手への言葉か、こんなフレーズが続きます。

胸を張って歩けよ 前を見て歩けよ

希望の光なんてなくったって いいじゃないか

最初は「僕らどこへ向かおうか」と言っていたのが、大変化です。とりあえず前に進まなければ、と。強い。チャットモンチーの強さ、しなやかさってこういうところですよね。

で、最後の部分。これまた好きな部分なんですが、

シャングリラ 君を想うと今日も眠れない僕のこと

ダメな人って叱りながら 愛してくれ

結局、素直になることにしたというべきでしょうか。「僕のことダメな人って叱りながら愛してくれ」って、あまりにまっすぐな言葉なので刺さります。

 

いかがだったでしょうか。タイトルの「シャングリラ」は、呼びかけているから人名だ、という解釈もあるようですが、本来の意味の理想郷、桃源郷としての意味も少なからず含まれているでしょう。難しいところではありますが……。

 

MV


www.youtube.com

MVを手掛けたのは福井英晃さんで、『ハナノユメ』から『きみがその気なら』や『Magical Fiction』まで手掛けている方です。ポップなイメージのMVも多くて、初めてみた人でも受け入れやすい仕上がりだと思います。

最初に見たときは、寝ていると思っていたえっちゃんが実は壁にくっついて立っていただけだったというシーンでまんまと驚かされた印象があります(笑)

全体としてカラフルなリングがテーマに仕上がっていますが、この4つ打ちのバスドラムとぴったり合っていると思います。やっぱりMVって何より音楽とイメージ・リズムが合っているのが大事ですよね。

YouTubeのコメントを見ていたら「どこか気の抜けたような感じ」という言葉があってピンときました。このMV、謎のダンサーといい、ハリボテのアンプといい、結構気が抜けているんですよね。なるほどチャットモンチーというバンドの魅力の一側面をうまく引き出せているMVなのかな、とも思いました。