三匹の羊/チャットモンチー

チャットモンチーと私

『ミカヅキ』レビュー

作詞・作曲:橋本絵莉子
『生命力』収録の最終曲。

えっちゃん高校時代の一曲。ポップでアップテンポな曲が多い『生命力』で、同じく高校時代の『橙』と双璧を成す存在です。
『橙』同様あくまでシンプルで、目立つ曲ではないですが、チャットモンチーの代表作たるこのアルバムを整える重要な曲です。

ミカヅキ

ミカヅキ

冒頭はボーカルからゆっくり始まります。
「ミーカーヅーキになりたーかったー」という音程は、唱歌『ふるさと』の「兎追いし…」を思わせるようで、なかなか琴線に触れる歌い出し。
歌詞は全部載せる訳には行かないので、ぜひ皆さんには聴いて確かめてほしいのですが、「抽象的だけどしっくり来る」タイプの歌詞です。

ミカヅキになりたい。」
背景はよくわからないけれど、きっと作者はなんとなく満ち足りない気分なのでしょうね。具体的に述べない宜しさがあって、誰しも心当たりのある表現です。描写は「月」「私」に限られ、夜にふと空を見上げた「私」が「ミカヅキ」に話しかけるような形になっています。

わからないながらに詩的だなと思うフレーズは、
「落ちていく自分に 紺の絵の具を足して ぐちゃぐちゃにした」
です。勿論ミカヅキとの比較が前提なのですが、完全に「虚」の心理描写ですよね。精神的にしんどくなっていく自分の心を自分で制御しようと、あるいは諦めている様子を三日月に例えて述べているのでしょうか。美しい表現です。

よくわからないわからないと言いましたが、歌詞全体を読むと、夜空の下で、些細で具体的な悩みなどは打ち捨ててしまって、段々と「生命力」がみなぎってくる作者の様子がよく見えます。
その証拠に、「ミカヅキになりたかった」は「なりたい」に、「ぐちゃぐちゃにした」から「私がいた」「あなたがいる」というように変化してきます。
歌詞の進行に合わせて音楽もベース→ドラム→ギターと音が増え、生き生きとしてくる。まさに『生命力』を締め括るに相応しい曲でしょう。

この曲、シンプルな音作りにも関わらず聴きがいがあるのは、やはりメロディラインの巧さとベースのおかげでしょうか。
まず、先ほども述べた合唱曲のような懐かしさを感じるメロディ、そしてえっちゃんの
優しい歌唱。優しいとひとくちに言っても、『LOVE IS SOUP』『びろうど』など色々ありますが、ここでは素性としての優しさです。
『橙』もそうなのですが、音程が高すぎないこともあってか、この曲は素顔で歌っているようなイメージがあります。装わない歌声とでも言えば良いでしょうか。かっこつけもかわいこぶりもしない、素直な声がぐっさり刺さります。

そして、あっこのベースの良さ。最初のほぼアカペラみたいなところから、ベースはよく動きながらサブのメロディを奏でています。もはやコーラス。手で弾いているのかはよく知りませんが、それこそ歌声のようなあたたかく頼れる音を出しています。ドラムやギターが単調な中で準メロディとでも言えるようなメロディを奏でているのがこの曲のもう一つの良さです。

生命力

生命力